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【大家さんのための賃貸トラブル相談室】 駐車場の明渡の強制執行手続の流れ

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【大家さんからの御相談】

私は自己所有の土地を月極駐車場として貸していますが,賃借人のAさんが半年くらい前から賃料を滞納していて連絡がつかなかったため,弁護士に依頼して,駐車場の土地の明渡を求める訴訟を提起し,この度,その判決が確定しました。まだ,Aさんの車両は駐車場に放置されたままですが,その後は,どのような手続を経て,駐車場の明渡が実現されるのでしょうか?

【弁護士のアドバイス】

判決確定後の駐車場の明渡の強制執行手続は以下のような流れで進められます。

1 明渡の強制執行の申立て

判決が出たにもかかわらず,依然として,賃借人が任意に駐車場を明け渡さない場合には,裁判所に強制執行の申立てを行う必要があります。

2 執行官面接

強制執行の申立てを行うと,執行官または執行官室より複数の日程を指示され,執行官との面接が実施されます。執行官面接では,不動産の占有状況,賃借人の状況,施錠の有無,執行補助者(不動産内の荷物の選別・運搬・保管を行う業者)の有無,車両の状況(車両の所有者・車種・大きさ・保管状況等)等が確認されます。

3 執行催告

(1)駐車場における車両の確認

執行官は,駐車場において車両の有無を確認します。賃借人が立ち会う場合,まずは賃借人自身に車両所有の有無を確認した上,車両の鍵を開錠する依頼をします。賃借人が任意に車両の鍵を開錠しない場合や賃借人が不在の場合,執行官は,鍵の技術者に車両の鍵を開錠するよう指示します。車両の鍵を開錠した後,執行官は,車両内の状況を確認すると共に,車検証等によって,車両の所有者(駐車場の占有者)を認定します。

(2)催告手続

上記作業によって,車両の所有者(使用者),すなわち駐車場の占有者が賃借人であると判断された場合,執行官は,引渡期限(執行催告期日から1か月を経過する日)と明渡実施日(断行日)(引渡期限までのうち適当な日時)を記載した公示書を駐車場に貼り付けます(民執168条の2)。具体的には,駐車場の壁面や地面(地面が土の場合は杭を打ってそこに掲示することもあります。)公示書を掲示することになります。

(3)催告手続の完了

以上のやり取りが終了したら,執行官は,再度車両の鍵を施錠します(鍵の技術者が開錠した場合は,技術者が施錠します。)。最後に,催告手続に立ち会った,立会人,債権者代理人である弁護士,鍵の技術者は,強制施行調書に署名押印することで執行催告手続は完了します。

4 明渡執行(断行)

債務者(賃借人)が車両の引渡を受けない場合には,レッカー車等により,駐車場から車両内の動産と共に運び出します。

最後に断行手続に立ち会った,立会人,債権者代理人である弁護士,鍵の技術者は,強制執行調書に署名押印することで明渡執行(断行)手続は完了します。

5 自動車執行の申立て(競り売り)

登録自動車については,執行法で特に定めれいる自動車執行の売却手続によることになり,執行官が申立人となって,自動車執行の申立てをすることになります。イメージとしては不動産競売に近い売却手続です。

競り売り等によって得た売却代金については,売却及び保管に要した費用にまず充当され,それでも残額がある場合,執行官は供託することになります(民執168条8項)。落札金額が売却及び保管に要した費用を超えない場合は,債権者側において動産の落札のために支出したとしても,売却及び保管費用に充当されるため,実質的な負担は少ないといえます。